ポエム
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夏の朝
彼は夏の朝が好きだと言っていた。
まだ日が出てそんなに立っていない、蒸し暑くない朝。
寮の周りを歩き、池に向かうのだ。
彼は夏の朝のために早起きが得意になったという。

私の朝は無かった。
昼間には知らんぷりをして、
夜中には埋め合わせを求められ、
つまり夜というものは私をひどく追い詰めるために、
私には朝が無かった。

だから、だろうか。
私が彼を戸惑わせてしまったのは。
私は彼を知ってははいけなかった。
彼は私を大切だといってくれたけれど、
それ以上に私は彼をすべてだと思ってしまったから。

真面目で優しい性格がいい人を演じ続けていた
そんな子供の成れの果て

彼が私のすべてに見えても、
甘んじてすべてを受け入れてもらえると思うな。
もう遅いのだが。

今更戻れないだろう。
彼がひとりの友人だった頃、
私が私を演じられていた頃、
毎日が違和感なく感じられていた頃。

だが今更変われないだろうか。
彼をすべてだと思わないように。
戸惑わせたことを、
忘れてはもらえないだろうし、
認めてはもらえないだろうと思う。
でも、私は知ってしまったのだから理解しなけらばならない。

私を責め立てる夜を、
初めてかなり前倒しに引き剥がした。
目覚ましの音、朝五時半。
私は彼と同じには成れないし、
それは違うと知っているけれど。
初めて、朝を見た。

涼しい風が、頬を撫でる。
まだ眩しくない、明るさ。
何重にも響く、蝉の声。
木々が半ば隠していても、空は広い。
そして、池が、輝いている。

そこに私はいてもいなくても同じで。
夏の、朝が、あった。

次、彼と会うときは。
彼と同じものかどうかはわからないけれど、
夏の朝を知ったんだ、と、伝えよう。
19/08/02 18:41更新 / なさか

■作者メッセージ
早起きなんて学校行事などを除いてできなかった私
そしてある種の「いい子」になりたかった私が
彼を知り夏の朝を知る話

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