ポエム
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幼き日、ケアンズの夏
15歳の冬、家族でケアンズに行った
思い返すと浮かんでくるのは女性たちの笑みと憂いと

ただただ純真で
疑うことを知らなかったあのころ

観光客向けの飲み屋の
誘いかけるようなお姉さんの笑顔
僕は好かれたのだと思ってしまう
笑顔の絶えないテラス席
日本の倍はあろうかというアイスココアが
濃厚なショコラで僕の舌を
南国のときめきで熱くする

ホテルは入り口から壮麗な通路が続き
受付の若い女性の茶の瞳は湖のような深みを讃えて
その愛くるしいまろやかな陶器のような笑みに
胸中に淡いさざ波の寄せては返しが止まらない

翌日バスに乗るとシャッターの降りた店の前に
憂い顔で座り込む1人の少女
君はなぜそんな顔をしているの?
君はこんな素晴らしい世界に住んでるのに

ヤシの木のしげるバス停で少女が乗り込んできたとき
僕は彼女がほとんど同じ年頃だってことがすぐわかった
でもただ圧倒されたその体つき
肉感的ともセクシーというのも違う
ただ西洋人的なその体つき
男としての誇りやアジア人としての引け目が
少女への親近感と混ざりあって溢れだし
湿った生暖かい風が胸中を吹き荒れてやまなかった

それでも水色の海はその魔法で
すべてをみずみずしく変えてしまうようで
ほとりで弾けるようなオレンジジュースを飲んで
どこまでも白と青の広がる大地で
女性たちの笑みの余韻を
少女の肉体の面影を
やがて来たる青年の日の夢として
地平線の果てへと託すように風を感じていた
幼き日のケアンズの夏
19/05/09 04:22更新 / 坂上春成

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