ポエム
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変化
誰もいない場所に行きたかった
本当に逢いたい相手だけのため
山岳地帯の原生林へと向かった
人が踏み込めない所へ行くため

野生の熊が暮らす森だったから
地元に人たちにすら止められた
命を失う覚悟はできていたから
家族と職場の電話番号を預けた

傍で熊の声がしたら助からない
そう警告されて爆竹を渡された

月のない深夜の森は一面の暗闇
顔の前にかざす手すら見えない

急にどうしようもなく怖くなる
熊に食い殺されて死ぬのは嫌だ
その前に確かめたいことがある

怒りに震える唸り声が聞こえた
右の闇へ爆竹の束を投げつけた
唸り声がピタリと止むと同時に
森中の動物たちの鳴き声が轟く
怖さよりも申し訳なさが先立つ

遭遇はいつも予期せぬ時に来る
逢いたい相手がその姿を見せた
だが幻のようにどこかへ消えた
青白い光の球が夜空を切り裂く

これ以上はもう望めないだろう
なぜかそう感じて森を後にした

人混みがあれほど嫌だったのに
その日から気にならなくなった

人混みに行くことは好まずとも
人のいる気配でどこか安心する

そんな自分に変わってしまった





19/06/21 00:24更新 / エメラルド

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