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【短歌56首】ぬらっ
ぬらっ




憎しみを社会に向けてひとに向け自分に向けてそこで落ち着く



「死ね」という言葉によって君の持つ説得力が自殺したのだ



学級会 トイレでズボンを脱がされた話にみんなで耳澄ます午後



安全を求めるうちに狭い方暗い方へと追われる獣



朝起きて「おやすみなさい」のメール読みそれに答える日本語がない



鬼の面 年々かわいくなってきて豆がイジメになる日も近い



地下鉄に自殺防止の柵できて人を押してもせいぜい打撲



伝わったようだがオレが言ったのと逆方向に行く迷い人



絵日記の中の家族が一列に並んで立って笑うのを見た



指されてもわからないから黙ってる「座っていい」しか聞きたくはない



解答欄ずっとおんなじ文字並び不安だアイアイオエエエエエエ



ばれなけりゃいいさと風呂で小便をすればなぜだかいつもより濃い



殺人をしてしまったら殺人をしてない人に憧れそうだ



オレ以外みんな真面目に生きていて取り残された気のする深夜



戦いに行きはしないが深刻なポーズをしてるガンプラとオレ



黄色い紙郵便受けに入ってて読んで捨てたらまたも黄色い



祈りとは声も指先も届かない者にダメ元で伝える手段



二十年通い続ける床屋だがいまだ『ドカベン』開くことなし



ヒョウ柄の強そうな人を後ろから見ているオレの柄はチェックだ



プロ野球選手のシールを集めるがG. G.佐藤ばっかり当たる



このオレの入浴シーンを謎として見る猫アリス牝7ヶ月



シューティングゲームのうまいやつが来て雨粒全てよけて帰った



歴史上すべてが大事教科書をキラキラさせる君のイエロー



戦場に細川たかしの笑い声 ハッハッハッドカーンハッハッハッドカーン



関東や関西イベント盛り上がりひとり東北に歌書読むオレは



桜の木見上げて写真を撮るひとの片方曲げた足がよかった



精子以前、子のない頃の父の食う牛丼以前、牛や稲穂や



人生をやってることにはなってるがあまりそういう感じではない



Aだねと言われてBへ歩み出すオレの進路は危ういだろう



重役が何人か来てその中の不吉において抜きん出た顔




うんこ味のカレーのほうを真剣に選んだ君の頬に飯粒



55を20と20と15とに分解してる雪道の上



幸せなあちらのオレが今ここのこのオレを思いぞっとする夜



ぱぴぷぺのポップコーンに固いのがあって口からいま出すところ



ああ人は諭吉の下に一葉をつくり英世をその下とした



ストローで飲み終えた後しばらくはスースースースー吸う男性だ



美しく映る鏡があるならばそれには映らないよう走る



透明なガラスのせいで進めないふりがうまくて行かないで済む



生命を恥じるとりわけ火に触れた指を即座に引っ込めるとき



水色のボールころがり土がつく 夢は習字の先生でした



「少年よ神話になれ」と口ずさみ楽しげな現実のおじさん



柔道の授業で早く負けようとやわらかく踏む畳のみどり



東京に行って頑張りたいなどと聞こえるベンチにまどろんでゆく



ああオレもナナコカードを勧められ断ってああ人間してる



女子バレー見慣れたころに男子バレー見ると驚く見慣れるまでは



ワンタンメン専門店の前を過ぎ唱えるわんたんめんせんもんてん



「ああいうふうになっちゃだめだ」と十歳のころに言われた指をさされて



お時間があれば話をしたいという声しりぞけて暇もてあます



おみこしになって元気な人達にかつがれたいな年に二回は



雪かきにも草むしりにもあらわれる中途半端なオレの性格



ヨーグルトを容器とフタとスプーンとスプーン袋にして食べ終える



オレに対し決定的な一言を持っていそうな沈黙の人



好きなだけ言わせといたら在日で生活保護で毛が無くて死者



政権とハラスメントの絶望をフォローしすぎた切り捨ててゆく



美男美女だけのドラマにダンプカー突っ込んで結局は感動



膝蹴りを暗い野原で受けている世界で一番すばらしい俺
19/10/15 09:04更新 / 工藤吉生

■作者メッセージ
短歌は57577。季語はいりません。

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