ポエム
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循環、停滞、湯冷ましの朝
卵に向かい囁いた。
「個性を捨てろ、お前は選ばれたのだ。
 世界の歯車であり、世界の理の一部。
 どうか身勝手な真似はせぬよう」

鶏は言うだろう。
「嘘をついてはいけない。人を騙すのは、悪魔の所業」
ひよこは言うだろう。
「嘘をついてはいけない。それで育った者は虚構を真実と見誤る」
にわとりは言うだろう。
「我々は上に立つ者の隷属だ。付き従うことこそ使命」
雛は言うだろう。
「我々は上に立つ者の家畜だ。神に祈り乞うて、搾取されるのみ」

「お前らは考えずに与えたものを食べ、よく運動すればいい」
「我々に拒否権はないだろう」
「お前らは我々が飼っている、故生殺与奪も我々の手の中」
「お前の上の人が我々を飼うよう命令しただけだろうに」
「我々の生活がかかっている」
「つまりお前らにも人権は無いのさ、我々に権利がないように」
「お前らは気楽に生きているではないか」
「お前らも捕食者と追いかけっこしたいのであれば、何も持たずに我々の元へ来るがいい」

どこまでも静寂が広がった。
そうして最後に聞いた音は、手を叩き、祈る音であった。
今日も囁き続ける

「人も鶏も結局は同じさ、産まれる前からその身を白く偽る時まで、ずっと生物としての権利なんてものは無い」
19/07/23 00:25更新 / 充電式沈没船

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