ポエム
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再会
司門君は壁の時計を気にしていた

あれほど陽気にしゃべっていた君がふと黙り込み

僕から小さな手荷物を受け取った

列車のデッキで振り向き すがる様に言う

「一緒に来て」

「無理なこと言うなよ」

二人は黙り込んだ



君はどうしてもと言う親戚の願いを断れず

見合の為に里へ帰る

僕は二度の失恋から一つだけ学んだ

言葉で伝えなければ恋は枯れてしまう事



「一緒には行けないけど

もし も一度君がこのホームに立つ時

必ず 僕はここにいるから」

君はこっくりとうなずくと

「月曜日の朝一番早く着く列車で戻るから」

そう言った



その日 僕は始発電車でその駅にむかった

君を乗せてるはずの列車が入る

一人 二人と人が降りて来る

大きな荷物を持った人でホームはごった返す

やがて終着駅のホームに人影が途絶えた

僕は抜け殻のような心を抱いてベンチに座り込み

清掃員が慌ただしく車内を回るのを見つめてた

下を向くと涙がこぼれそうでじっと前を見てた

やがて列車がゆっくりとホームを出た



吹き抜ける風に景色がわずかににじむ

向かいのホームに君の姿さえ思い浮かべてる

「ばか」 まぎれも無い君の声

僕は向かいのホームへ走り出した

打ち水にすべって転んだ

とにかく走った

「どこで待ってるのよ あわてんぼなんだから」

君の目が泣きそうに笑ってる

「おしりだいじょうぶ」

「少し冷たい ごめん どれくらい待った」

「三十分よ」

「来ないと思わなかった」

「思わないわ」

僕は君の言葉に心が震えた

「だっていつもの事だもの 又寝坊したなって」

僕は笑ってしまった 嬉しいのか可笑しいのか



「手冷たいね」

僕は君の手を握ったままコートのポケットへ

「あったかい」

君はそっと肩を寄せる

その時司門君は思った

僕は二度とこの手を離さない
19/11/02 07:17更新 / 司門君

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