ポエム
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優しい男
今日も泊まっていきなよと まだ名も無い間柄の君の言葉。
バイト終わるまで待っててと、君は出掛け、僕は部屋で待つ。
3時間、とても長くて、でも何もしてあげられないから悔しくて、
僕はせめてもと、君が通るT字路で待つことにした。

急いで出たから、半袖のTシャツにコートだけ羽織って、少し寒くて、でも君の手を握ってあげたくて、手はずっとポケットの中で。
クリスマスのCMの渡瀬マキは、こんな気持ちだったのかななんてこと、考えながら。
40分くらい待ってて、君が来た。

思ってた方向と違かったから、少し不格好な迎え方になってしまったけれど、
いいや、「部屋まで一緒に帰ろう。」
でも君は少し早歩き。
「ごめん、今から帰れないかな」
僕は頭真っ白で、でもなんてことないような顔して、「どうしたの?」
そっか、バイト先の人達が、部屋に飲みに来ることになっちゃったのか。
「仕方ない!仕方ないよ!気にしないで!
すぐに準備して帰るから!」って。
「夜は道が空いてるから、1時間で帰れるから楽だよ」って、思ってもないのに。
君が一緒に食べようって、作ってくれてたカレー、一気に食べた。
美味しかった、でも少しむせそうになったのは、早食いのせいだよと隠す。

何度も「ごめんね」って、君の言葉。
気にしないで、大丈夫、お酒飲んでなくてよかったよと、僕は精一杯笑顔を作って、明るく取り繕って、最後まで。
ご馳走様、とても美味しかった、ありがとう、お邪魔しましたと、大きな荷物を抱えて部屋を飛び出した。

ヘルメットを被って、バイクに跨りキーを捻る。
まだ頭の中は真っ白で、でも急かされるように、闇の中へ走り出す。

深夜2時、寒くて、寒くて、堰を切ったように感情が止まらなくなる。
僕は、勝手に舞い上がっていた自分の心と、それでも気持ちに嘘しかつけなかった、素直になれなかった自分自身がただ、情けなくて情けなくて悔しくて。
風の中、ちくしょお!ちくしょお!って何度も何度も叫んで、じきに黙って、ヘッドライドだけが照らす世界、涙だけが流れ続ける。

僕は、いつまでも僕は…
19/12/14 12:10更新 / 誠実


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