ポエム
[TOP]
最後の狼
眼下に拡がる雪原を俯瞰して
地平の彼方にその姿を見る

我は走る事を恐れた
最期の老狼

すでに無い繁栄と最期の望みを
雪踊る地平の彼方に見た

灰色に濁る瞳に走る幻を捉え
意を決し 走る


駆けども駆けども 追い付かぬ

それでも一度駆けたなら恐れは消え
尾の向こうへと遠退いていった

此方へ寄らぬ姿を認めた時
駆ける意志は潰えかけ
暖かな穴蔵が頭の隅を過る

そのうち独り嵐に巻かれ
そのどちらも見失った


駆けた姿は誇らしかったか
微睡む安寧を棄てて 後悔してはいないか


無論 我は狼

老いたりと云えど 終生の狩人

最期に駆け出した己を誇りとしよう
その末が雪に埋もれ
ただ骸と成り果てるとしても



嵐の向こうに朝焼けが見える
もうすぐだ

鼓動と共に高まってゆけ
視界の全てを掻き分け 前へ 前へ

その向こうに希望が失われていたとしても
命が尽きるまで 駆けよう

我の誇りにかけて 牙が折れるまで。


 
19/02/14 21:30更新 / K

TOP | 感想 | RSS

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c