ポエム
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猫という生き物の皮を借りて
 本にはこう記述されていた。

 猫という生き物は長きにわたり人間の友である。過去の彼らは伝承の上に眠り、そして現在に至るに人の足もとをうろちょろとしている。

 だからであろうね。最寄駅を伝えるアナウンスで目覚めると僕は猫になっていた。

 真っ黒な詰襟の代わりに身をつつむのは真っ黒な体毛であり、背丈は低く、ながながとした尾が半ば無意識にうねうねとしている。

「1番線、ドアが閉まります。ご注意ください」

 ホームに出ると高校生の群れが迫る。その中に一人、長髪を靡かせる少女がいた。

 一方的な一目惚れ。話したことは少ししかない。虚構の崇拝に近いものを感じる。それ故に親密になることは躊躇われた。

 だが、今の僕は猫であった。

 そろりそろりと近寄って、彼女の横をちょこちょこと並走する。

 そして目があった。笑顔をくれた。僕は彼女の周りをくるくると回った。

 回り続け、目を回し、本当に目が覚めた。僕はやはり人間であり、膝に開かれたままの本が置かれていた。

「2番線、ドアが閉まります。ご注意ください」

 電車を降りて、後ろを見ると彼女がいる。

 だが、今の僕は猫ではなかった。
19/10/07 00:34更新 / 木縁魚求

■作者メッセージ
読みづらいもんだよ。

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