ポエム
[TOP]
天使
老人ホームの昼食時間
食堂に賑やかに響く声
それは若い職員のもの
お年寄りは静かに座る

済んだなら片づけるよ
耳元で尋ねる大きな声
待って、私がやります
そっと近づく小さな声

がんばって食べようね
耳元で励ます明るい声
お年寄りがお箸を持つ
ゆっくりと口にはこぶ

食事後のトイレの前は
いつも車いすの大行列
後尾に並ぶ介護職員は
時計に目をやり苛立つ

今日からオムツにして
耳元で命じる大きな声
あ、私が代りますから
そっと近づく小さな声

その人は分かっていた
オムツは世話が楽でも
トイレとは永遠の別れ
一つ尊厳が消えること

職員の午後の休憩時間
楽しく談笑する輪から
小さな声の主は離れて
うす暗い廊下へ向かう

トイレタイムの名残の
床の汚れを拭き取って
落ちているゴミを拾う
そしてまた輪に戻った

誰も気づいてないけど
片田舎の小さな施設で
ぼくは天使を見たんだ
19/06/30 17:09更新 / エメラルド

TOP | 感想 | RSS

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c