ポエム
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Cruel tale


暖かな木漏れ日の中で
古木に抱かれて育まれた果実は
何かを呟いた

何処からか届いた呻きへ向かって
その昏い 昏い 声音に応える様に


はち切れそうに熟れた果実は云う


¨嗚呼 私に口付けをねだるの¨
¨暖かさとは無縁の笑みを浮かべた大地が¨

¨もう このまま我慢してまで¨
¨貴方に抱かれて居られない¨


その言葉を耳にしてから 間も無く
抱き締めていた古木が悲鳴をあげた

その9.8[m/s2]の加速に
伸ばす枝が追い付けないのを知っていたから


吐き気を催す程の甘い腐臭は
口付けた刹那に撒き散らされた


咲き頃を誤った花と果実の往く末
既に遅かれ早かれ 心も身体も廃棄物
最期にやっとの思いで残せたのは
ただの不快な後味



軈て 笑みを怒りで見詰めた後に訪れよう

幸せを願った心を自ら穢す
待ち望んではいなかった日々が


抱き締めて過ごした日々から
忘却の彼方へ駆け抜ける

それは既に愛の為ではなく


これ以上 叶う筈の無い希望を
抱かせないで済む様に

これ以上 残酷な仕打ちを
しないで済む様に




古木は残響に耳を塞いだ

もう微笑みを愛でてやる明日は
二度と来ない。



 
18/10/31 18:09更新 / K

■作者メッセージ
抱き締められている者の多くは、その時にその感触には気付かない。

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