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絶望のパノラマ《あたしの番》

棄てたのは思い出
あたしの暗い庭で咲いてた薔薇

棄てたのは思い出
あたしの暗い庭を照らせない朧月

棄てたのは
ギラギラとした
あたしの蛇のような心だったのか

それとも誰にも言えない
柔らかな慰めだったりしたのだろうか

玩具というものを
すべて棄ててしまった
南の街を歩いていても
陽気な燕の飛び交うさまを見るだけ

なにをするでなく
なんの意味も見出せない鴉は
もう生きていくことさえ
悪いと思ってしまう漆黒の翼を折り畳み

それというのも
死ぬことが怖いからだが
この体にはどんな愛を告げる気もないが
生きることの息苦しさは呟き声にして
漏らしてしまってもいいのだろうか

ああそれでもなおあたしは蛇のような狡猾さで
誰彼かまわず牙を剥きたいのだが
簀巻きにされたり殺されかけたり
誰になにを告げるわけでも無く
ただおもむろに巻いたとぐろをほどき
まるで逃げる方向に向かって
進んでいるのだ

けれどもそれは戦うための
前進だというパノラマの風景

世界にただ一匹愛の呪文を信じない
なし崩しの情を信じる天邪鬼の絶望
 


19/05/30 22:49更新 / 花澤悠

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