ポエム
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「ヒヨコが見る月は」
その星空が落ちるまで
時間はそんなに要らなかった
立ち止まる人は、私一人

いつもより少しだけ、短くした前髪
だけどなぜか鏡を覗き込むよりも早く
かつての私に問いかけていた

ずっと見過ごしてきた瞬間
既視感、違和感、疎外感
鶏が先だって君は言ったけど
ここにある卵は、ヒヨコにはなれない

「例えば」って言葉はそれだけで
この心を遠く、置き去りにしてくれる
あの月を初めて見上げたときから、
多分、本当は全て知っていた

失ったのは失わない自分
明日の自分に「さよなら」を


毎朝、同じ時間に家を出る
信号の変わるタイミング
走り出す人たち、私たち

最近誰とも話していない
気がついてから、これまでも変わらず
そうだった事に思い至った

きっと意味なんてない感情
焦燥、喧騒、眺望、仮想
卵が先だって君は言ったけど
ここにいる鶏は、卵を産めない

「懐かしい」って言葉はそれだけで
この身体をこんなにも、傷だらけにする
二度目に現れた、あの三日月が、
私の、優しさの全てになった

手に入れたのは、空っぽの自分
昨日の自分に「また会いましょう」を


「君」って言葉はそれだけで
この不確かな意識に、はっきりと形をくれる
最期に見つける新月の色合いが
君の、悲しみの全てになればいい

卵を忘れたヒヨコは、鶏の夢を見る
ヒヨコの夢を、鶏は卵へ託した
さあ、この卵を割ってみようか
今日の自分に「はじめまして」を


鶏が先だって、君は言ったけど
全ての君に「ありがとう」を
19/06/23 02:19更新 / アンタレス

■作者メッセージ
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